2011年から実施されている林道パトロールの実績を活かして誕生したのが「保全体験型ナイトツアーAKISAMIYO」です。やんばるの歴史を知る地域ガイドと生き物や自然に詳しいネイチャーガイドの2人の案内で、夜の「やんばるの森」へとでかけます。生き物をみつけると事前に渡されたGPS機器に登録。参加者は自然保護官「レンジャー」のような活動が体験できる全国的にも珍しいモニタリングツアーです。
「林道パトロール」の体験から得た、やんばるの魅力を観光客と共有
▲やんばるの自然を守る「やんばるリンクス」代表で国頭村議会議員でもある山川安雄さん
「保全体験型ナイトツアーAKISAMIYO」立ち上げの中心人物、山川安雄さんは本ツアーの地域ガイドとしても活躍。「暗闇の中、昆虫を見つけたり、不思議な生き物の鳴き声を聞いたりして、五感が研ぎ澄まされる“アキサミヨ”な体験を楽しんでください」と山川さん。全国でも類を見ない環境モニタリングツアーへと出かけてみましょう。
▲ネイチャーガイドの妹尾望さん。ガイド歴12年
以前から問題になっていた、ゴミの不法投棄や動植物の採取、盗掘などからやんばるの森を守るため2011年より行われていた林道パトロール。希少な生物や美しい星空など林道パトロールを通して知り得たやんばるの魅力をもっとたくさんの人にたいけんしてもらいたい、そして、やんばるの自然を保全していく活動の仲間を増やしていきたいという想いから誕生したのが「保全体験型ナイトツアーAKISAMIYO」です。ちなみに「アキサミヨー」とは、驚いた時に思わず口から出る沖縄の方言のことです。
通常のネイチャーツアーとは異なり、ツアー中に目撃した生き物の情報などをGPS機器や調査票に記録。そのデータは蓄積され、今後のやんばるの保全に役立てられます。参加することでやんばる保全の一端を担えるとてもためになるツアーです。
ガイドから注意事項などの説明を聞く
まずは集合場所にてガイドからやんばるの森の説明や注意事項などのガイダンスを受けます。なお、前もって公式HP(https://yambaru-akisamiyo.com/)内にある事前学習動画を視聴しておきましょう。
AKISAMIYOツアーへ出発!
▲靴底をきれいに消毒してから調査開始
▲マングース北上防止柵の前で外来種が固有種へ与える影響などの説明を聞きました
調査ポイントに出かける前に靴底の消毒を行います。これは外来種の種子などをやんばるの森へ持ち込まないようにするための配慮から。貴重な森の中に入るためには細心の注意が必要となります。また、森へ入る前にマングース北上防止柵を見学。これは、マングースがやんばるの森への侵入を防ぐためのもので、柵に施されたさまざまな工夫を知ることができます。
「おじゃまします」の気持ちで森の中へ
▲森へ入る前に森の神様と生き物たちに手を合わせ挨拶(安全祈願)をします
▲足下にいる小さな昆虫などの生き物を踏みつけないよう注意して歩きます。夜の生き物たちへの影響が少ない赤色ライトを使用します
▲リュウキュウアオバズク(固有亜種のフクロウ)の鳴き声が。ガイドさんがタブレットを使って声の主を説明してくれます
やんばる3村某所へと到着(具体的な調査場所は希少生物保護のため秘密)。森へ入る前に地域ガイドの山川さんが森の神様にウチナーグチ(沖縄の方言)で、森に立ち入る前の挨拶と道中の安全を祈願します。これはやんばるで暮らしてきた人々が森へ入る前に行ってきた風習とのこと。地域性を学ぶことができるのもこのツアーならではです。森の中に入るとそこは漆黒の闇。取材時はクロイワボタルが光を放ち幻想的な雰囲気が漂っていました。
レンジャー気分でモニタリング
▲沖縄在来のカタツムリで最も大きなヤンバルマイマイはやんばる固有種で絶滅危惧種
▲奄美諸島と沖縄諸島のみに生息するシリケンイモリ(固有種)
▲側溝に潜むヒメハブ(奄美諸島と沖縄諸島の固有種)。危険な生物もいるので必ずガイドの指示に従いましょう
▲見かけた生き物はその場でGPS機器や調査票に記録
懐中電灯の灯りを頼りに森の中を進んでいくと路上を這うヤンバルマイマイ、道端を移動するシリケンイモリなどが現れました。さっそくGPS機器と調査票に記録します。まるで自然保護官になった気分が味わえます。なお調査対象は希少な動植物だけでなく、外来種や落書き、不法投棄、違法トラップなども含まれます。
貴重な体験を終えた感想を
▲ガイドと共にツアー全体を振り返り感想を述べます
集合場所へ戻り、ツアーを振り返ります。ツアーの感想や感じたことなどガイドに伝え、GPS機器と調査票を提出したら終了となります。
「やんばるの森の保全と利用」についての理解を深めることができる
ガイダンスでやんばるの森の知識を深めた後に夜の森に入ってみると、さまざまな生き物たちが暮らす空間にお邪魔しているような気分になりました。
やんばるの森を大切にしてきたネイチャーガイドさんや地域ガイドさんが丁寧に説明してくださったおかげで、やんばるならではの希少生物や地域にまつわる歴史を知ることができました。
特にこのツアーのキーワードである「やんばる森の保全と利用」という言葉について、考えさせられたツアーでした。